Sanzyusseiki-no-mori

ISO 3602 第一版 1989-09-01

国際規格(抜粋)

ドキュメンテーション―日本語(仮名書き)のローマ字表記

訳:財団法人 日本のローマ字社

1.適用の範囲および分野

この「国際規格」は、現代日本語の書きことばをローマ字で表記する体系を確立するものである。この体系を自由に使用するためには、ローマ字化しようとする者が現代日本語の書きことばの形式について詳細な知識を持っていることが必要である。

2.説明と定義

「国際規格」が係わるのは、仮名からローマ字への転写を示すだけであって、漢字または漢字と仮名の混在したものをローマ字に直接転写する方法を示すものではない。ローマ字で表記しようとする者は、漢字と仮名の関係を定めた規則を知っていなければならない。

3.採択された方式

3. 1 採用されたローマ字化の方法は、表1~3bに示されている。訓令式の名で知られている方式である。仮名の性質から、この変換体系は厳密な形では再変換できない。(原注2)

3. 2 方言や外国語音を表すいくつかの特別な仮名は、これらの表から除外してある。

4.形態素の切れ目

例外的に、仮名2文字が①1音節を示す連字を形成する場合と、②独立した2つの音節を表す場合がある。例えば「こうし」という3文字の仮名は、連字「こう」と「し」から成り、「格子」を意味する "kôsi" という語を表してもいるし、「子牛」を意味する "kousi" という語を表してもいる。日本語の辞書では、連字の分割は点やハイフンで示される。例えば上記の例でいえば、"kousi" は「こ・うし」であり、"kôsi" は「こうし」のように示される。

5.適用の一般原則

5. 1 単語の分かち書き

日本語の文書における漢字仮名交じり文では語間をあけることなく続けて書くが、ローマ字表記の日本語のテキストでは、語と語の間に空白をおいて区切る(分かち書きする)必要がある。

5. 2 大文字の使用

欧米語の習慣に従って、文の書きはじめ、および固有名詞の語頭は、大文字で書く。

5. 3 音節の終わりに来る "n" の文字

同一語内において、音節の終わりに "n" (仮名の「ん」または「ン」)が来て、その次に母音字または "y" が続く場合は、"kan'ô"(観桜)、"kin'yû"(金融)のように、"n" の後ろにアポストロフを入れる。音節の頭に "n" が来るときはアポストロフはつけない。

例:kinyû(記入)、kanô(可能)

5. 4 二重子音

子音で始まる音節の前に小さな「っ」(表1-72)が来るときは、この記号はやや右寄り(横書きではやや下寄り)に書かれる。このような場合は、次に来る子音を重ねる。

例:がっこう = gakkô

5. 5 長母音

仮名では、長母音は特定の2連字(表3a)または3連字(表3b)で表される。しかし、なかには上記の4に示した理由によって、2連字が実際には本当に2連字ではなく、2つの独立した音節を表している場合もある。疑わしいときは、辞書で確かめた方がいい。

ローマ字に変換するときは、長母音は母音の上に曲折アクセント記号[山形]を付けて示す。例えば、長母音の「おう」は "ô" となる。

カタカナで書く借用語では、長母音は仮名の後に長音符「ー」をつける。

例:カー(「カア」ではない)=kâ
  ビール(「ビイル」ではない)=bîru
  ソース(「ソオス」「ソウス」ではない)=sôsu

これらの長音符は、常に母音字の上の曲折アクセント記号[^]で転写される。

(原注2)厳格な転字をする場合は、上に示した体系と異なるものになる。

一般に日本語で使われている句読点は、以下のように転写される。

日本語 ローマ字
. (ピリオド)
, (コンマ)
- (ハイフン)
" (左側引用符)
" (右側引用符)
( (右側カッコ)
) (左側カッコ)

表1 - 非口蓋化音節を表わす1字仮名
No. H K R No. H K R No. H K R No. H K R No. H K R
1 a 2 i 3 u 4 e 5 o
6 ka 7 ki 8 ku 9 ke 10 ko
11 sa 12 si 13 su 14 se 15 so
16 ta 17 ti 18 tu 19 te 20 to
21 na 22 ni 23 nu 24 ne 25 no
26 ha 1 27 hi 28 hu 29 he 2 30 ho
31 ma 32 mi 33 mu 34 me 35 mo
36 ya - 37 yu - 38 yo
39 ra 40 ri 41 ru 42 re 43 ro
34 wa - - - 45 wo 3
46 n
47 ga 48 gi 49 gu 50 ge 51 go
52 za 53 zi 54 zu 55 ze 56 zo
57 da 58 zi 4 59 zu 4 60 de 61 do
62 ba 63 bi 64 bu 65 be 66 bo
67 pa 68 pi 69 pu 70 pe 71 po
72 - 5
  1. 助詞「は」は発音通り wa と表記する。
  2. 助詞「へ」は発音通り e と表記する。
  3. 「を(ヲ)」は直接目的語を示す助詞としてのみ用いられる。ローマ字では o と書く。
  4. 「ぢ(ヂ)」「づ(ヅ)」は「ち(チ)」と「つ(ツ)」の有声音として、それぞれ「ち(チ)」「つ(ツ)」に続けて書かれるときや、特定の複合語において用いられるが、ローマ字ではそれぞれ zi, zu と表記する。
  5. 子音を重ねて表記する。5. 4 を参照のこと。

表2 - 非口蓋化音節を表わす2連字の仮名 (原注1)
No. H K R No. H K R No. H K R
1 きゃ キャ kya 2 きゅ キュ kyu 3 きょ キョ kyo
4 しゃ シャ sya 5 しゅ シュ syu 6 しょ ショ syo
7 ちゃ チャ tya 8 ちゅ チュ tyu 9 ちょ チョ tyo
10 にゃ ニャ nya 11 にゅ ニュ nyu 12 にょ ニョ nyo
13 ひゃ ヒャ hya 14 ひゅ ヒュ hyu 15 ひょ ヒョ hyo
16 みゃ ミャ mya 17 みゅ ミュ myu 18 みょ ミョ myo
19 りゃ リャ rya 20 りゅ リュ ryu 21 りょ リョ ryo
22 ぎゃ ギャ gya 23 ぎゅ ギュ gyu 24 ぎょ ギョ gyo
25 じゃ ジャ zya 26 じゅ ジュ zyu 27 じょ ジョ zyo
28 ぢゃ ヂャ zya 2 29 ぢゅ ヂュ zyu 2 30 ぢょ ヂョ zyo 2
31 びゃ ビャ bya 32 びゅ ビュ byu 33 びょ ビョ byo
34 ぴゃ ピャ pya 35 ぴゅ ピュ pyu 36 ぴょ ピョ pyo
  1. ここに示す2連字は、普通の仮名とそれに続くやや右寄り(横書きでは下寄り)に書かれた小さい「ゃ(ャ)」「ゅ(ュ)」「ょ(ョ)」から成っている。
  2. 「ぢゃ(ヂャ)」「ぢゅ(ヂュ)」「ぢょ(ヂョ)」は、特定の複合語でそれぞれ「ちゃ(チャ)」「ちゅ(チュ)」「ちょ(チョ)」の有声音として用いられるが、ローマ字では zya, zyu, zyo と表記する。

表3a - 長音節を表わす2連字の仮名
No. H K R No. H K R No. H K R No. H K R No. H K R No. H K R
1 ああ アア â 2 いい イイ î 3 うう ウウ û 4 ええ エエ ê 5 おお オオ ô 6 おう オウ ô
7 かあ カア 8 きい キイ 9 くう クウ 10 けえ ケエ 11 こお コオ 12 こう コウ
13 さあ サア 14 しい シイ 15 すう スウ 16 せえ セエ 17 そお ソオ 18 そう ソウ
19 たあ タア 20 ちい チイ 21 つう ツウ 22 てえ テエ 23 とお トオ 24 とう トウ
25 なあ ナア 26 にい ニイ 27 ぬう ヌウ 28 ねえ ネエ 29 のお ノオ 30 のう ノウ
31 はあ ハア 32 ひい ヒイ 33 ふう フウ 34 へえ ヘエ 35 ほお ホオ 36 ほう ホウ
37 まあ マア 38 みい ミイ 39 むう ムウ 40 めえ メエ 41 もお モオ 42 もう モウ
43 やあ ヤア 44 ゆう ユウ 45 よお ヨオ 46 よう ヨウ
47 らあ ラア 48 りい リイ 49 るう ルウ 50 れえ レエ 51 ろお ロオ 52 ろう ロウ
53 わあ ワア
54 があ ガア 55 ぎい ギイ 56 ぐう グウ 57 げえ ゲエ 58 ごお ゴオ 59 ごう ゴウ
60 ざあ ザア 61 じい ジイ 62 ずう ズウ 63 ぜえ ゼエ 64 ぞお ゾオ 65 ぞう ゾウ
66 だあ ダア 67 ぢい ヂイ 68 づう ヅウ 69 でえ デエ 70 どお ドオ 71 どう ドウ
72 ばあ バア 73 びい ビイ 74 ぶう ブウ 75 べえ ベエ 76 ぼお ボオ 77 ぼう ボウ
78 ぱあ パア 79 ぴい ピイ 80 ぷう プウ 81 ぺえ ペエ 82 ぽお ポオ 83 ぽう ポウ
  1. この仮名2連字は、普通の大きさの仮名2字から成る。

    例: おかあさん okâsan おおきい ôkii
    くうき kûki おとうさん otôsan
    ねえさん nêsan
  2. 母音と母音の間に形態素の切れ目がある場合は、たとえ発音が類似していても、屈曲アクセント記号をつけた長母音の形で書いてはならない。

    例: ながあめ nagaame くう kuu
    いいん iin いう iu
    きいろ kiiro くされえん kusareen
    ほしい hosii おもう omou

表3b - 長音節を表わす3連字の仮名
No. H K R No. H K R No. H K R
1 きゃあ キャア kyâ 2 きゅう キュウ kyû 3 きょう キョウ kyô
4 しゃあ シャア syâ 5 しゅう シュウ syû 6 しょう ショウ syô
7 ちゃあ チャア tyâ 8 ちゅう チュウ tyû 9 ちょう チョウ tyô
10 にゃあ ニャア nyâ 11 にゅう ニュウ nyû 12 にょう ニョウ nyô
13 ひゃあ ヒャア hyâ 14 ひゅう ヒュウ hyû 15 ひょう ヒョウ hyô
16 みゃあ ミャア myâ 17 みゅう ミュウ myû 18 みょう ミョウ myô
19 りゃあ リャア ryâ 20 りゅウ リュウ ryû 21 りょう リョウ ryô
22 ぎゃあ ギャア gyâ 23 ぎゅう ギュウ gyû 24 ぎょう ギョウ gyô
25 じゃあ ジャア zyâ 26 じゅう ジュウ zyû 27 じょう ジョウ zyô
28 ぢゃあ ヂャア zyâ 29 ぢゅう ヂュウ zyû 30 ぢょう ヂョウ zyô
31 びゃあ ビャア byâ 32 びゅう ビュウ byû 33 びょう ビョウ byô
34 ぴゃあ ピャア pyâ 35 ぴゅう ピュウ pyû 36 ぴょう ピョウ pyô
  1. これらの3連字は普通の仮名、小さい仮名、普通の仮名の3字から成る。

    例: こうぎょう kôgyô みょうじ myôzi
    しょうひょう syôhyô りゅうこう ryûkô
    ちゅうい tyûi ひょうじょう hyôzyô
    ぎゅうにゅう gyûnyû はっぴょう happyô
  2. 母音と母音の間に形態素の切れ目がある場合は、たとえ発音が類似していても、曲折アクセント記号をつけた長音の形で書いてはならない。

    例: かいしゃあん kaisyaan きょおく kyooku
    ていしゅうん teisyuun
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